【台風と結婚式とキャンセル料金】
超大型台風19号が近付いています。
ちなみにこれを書き始めた現在は10月11日(金)の19:30。
大阪市内は台風前のエモい空が拝めましたが、風も雨もなく至って静かです。
街の喧騒も連休前の金曜だというのにすっかり寝静まったかのようにサイレントナイト。
さて。この超大型台風に見舞われたこの三連休。
幸いなことに弊社は明日12日は案件がありません。
13日夜のパーティは台風一過で無事に挙行できそうなので一安心といったところ。
とはいえこの三連休は、
「10月唯一の三連休」
「真ん中13日が大安日」
「猛暑を避けたい層が集中する婚礼トップシーズンの秋」
という一年の中でも有数の人気日和とあって、結婚式を予定されていた新郎新婦が大勢いらしゃいます。
そして昨日からSNS界隈を賑わせているのが、
「結婚式に呼ばれているけど交通機関も止まるし行くに行けない(行きたくない)参列者」
「案件はあるものの中止(延期)ならば多額のキャンセル料金を請求せざるを得ず矢面に立たされる式場関係者」
「両者の間と多額のキャンセル料金に悩まされてもうどうしてよいかわからずひたすら悩み泣き叫ぶ新郎新婦」
と、
「全然関係ないのに“中止しない新郎新婦”と“キャンセル料を求める式場”をひたすらバッシングするだけのガヤ(部外者)」
が混沌としており正に地獄絵図。
※このガヤが一番いらんくて「無料にしてあげなよーかわいそうだよー」みたいな無関係なクラスの女子が僕は苦手です
我々も決して他人ごとではなく、「自分だったらどう判断するのがベストか」をずっとこの一日考え続けています。
それぞれの立場があってそれぞれの気持ちが理解できる。
もちろん「台風なんて逸れてくれ」が全員共通の思い。
でも、大自然の驚異の前では人間は無力です。
そんな無力な自分が最大限に出来ること。それぞれの立場で考えてみました。
※現時点で今週末の婚礼を控えている新郎新婦さんには気分を害するような内容も多分に含まれています。無理せず落ち着いてから読んで下さいね。
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【式場側の目線】
まず弊社は式場関係者さんと同じく「プロデュース会社」です。
今回大きく取りざたされているのがキャンセル料問題。
結婚式を“直前で”キャンセルした場合の被害総額を考えてみます。
<飲食費>
簡単に言えば食材の発注。
特に婚礼は高級食材が出回るためにその額は通常の飲食店の比ではありません。
勿論保存が利くような商材や調味料、飲料は問題無いにしても、家庭のように簡単に「冷凍しておいて明日の晩御飯ね!」なんてわけにはいかないのです。
ブランド物の肉や魚ならば一か月前から納品を押さえておくこともザラにあり、また冷凍すれば味が落ちるのも当然なので「使い回し」が利かないのです。
更に現代では殆どの式場でコースは全てオリジナル。
通常の飲食店ならば「今日入ったマグロ、売り切れなかったから明日はステーキで売ろう!」なんてことが出来るのですが、
① メニューが異なるパーティには提供できない
② そもそも素材の味が落ちる
③ 万が一流用するにしても、次の婚礼案件はその一週間後
なんてことがあるので非常に難しいんですね。
・食材を無駄にする→式場自身の損害大
・食材の納品をキャンセルする→生産者、卸業者への損害大(そもそもキャンセル不可の場合が殆ど)
の板挟みな訳です。
<手配物>
手配物の中で「次回への流用」が非常に難しいのは「食品系のギフト」と「生花」です。
特に生花に関しては、婚礼に強い花屋さんほど一週間以上前につぼみの段階で自店に仕入れ、結婚式当日に満開になるように調整して「咲かせる」のです。
弊社のコーディネートで会場を桜で満開にした際も、毎日エアコンとライトで調整して当日の朝8分咲きになるよう調整して下さいました。(披露宴中に徐々に満開になるのです)
決して前日に花市場へ行って次の日にそのまま納品、というわけではないのです。
これは多分殆どの方が知らない裏事情。
<人件費>
「休ませればいいじゃん!」と思うのは管理職を知らない方々。
自社の社員ならば休日の補填と代替日くらいの設定で済むでしょう。しかし婚礼の多くは外注スタッフで回っています。
一社だけならば「全員自宅待機!」で済むような話も、フリーのカメラマンや音響スタッフからすれば仕事が一日飛ぶのも死活問題。
式場側が中止を宣言するならば、彼らの当日給与は補填する必要があります。
全てのスタッフが「半年以上前からその日のスケジュールを開けておく」のが婚礼スタッフなのです。
<会場費>
これは会場の胸先三寸。
「中止じゃなく延期にすればいいだろ?だったら次回使うから同じじゃないか!」
自然災害ではありませんが、以前店舗を経営していた際に同じようなことを幹事様から言われたことがあります。
でもちょっと待って欲しい。
例えば今回の「10/12」を、先に延期し「12/25」としたとします。
会場側は「10/12」と「12/25」二日分の売り上げが見込めるべきところ、延期された先の「12/25」の売り上げしか入らなくなってしまうのです。
お客様からすれば支払うのは同じ「一回分」なのですが、会場側は「二日分→一日分」に半減します。
これも「自然災害だから仕方がない」と口でいうのは簡単ですが、経営目線で一日分の売上を回収するのはそう簡単ではありません。
とはいえ!
この「会場費」に関してだけは、会場側が完全に自社の判断で、社外に迷惑を掛けることなく始末できる範疇です。
僕ならここで唯一男気を見せます。
ここまでが式場(会場)側の目線。
特に大手になればなるほどそのしがらみは強くなるので、ルールを捻じ曲げて「はいそーですか!」といかないのは仕方のない部分もあります。
男気は見せて欲しいですが、強制は出来ません。
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【ゲスト側の目線】
これはもう、もしかすると一番の被害者かもしれません。
・ストップする公共交通機関を見越して前乗りし宿泊
・暴風雨の中ずぶ濡れで参列した上に手にはご祝儀
・帰りのアクセスも補償されていない 果たして自宅は無事なのか?
正直に言うと、「事前にご祝儀や会費を送って当日は欠席する」判断もやむを得ないと思います。
それでも誰も責めませんし、責めるような間柄ならそもそも参列の必要もないでしょ。
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【新郎新婦の目線】
板挟みになって泣いている新郎新婦をTwitterで散見しました。
ここで非常に大事なのは、式場(会場)側とゲスト側からすると今回のクライアントはあくまでも「新郎新婦」です。
お二人が「やる!」といえば、スタッフは這ってでも出勤します。ゲストは前乗りで会場に向かいます。
どんな状況であれ全てのプログラムを滞りなく遂行するのがその道のプロです。
「式場側からキャンセルの連絡が来ない」という新郎新婦も見受けられましたが、ハッキリ言ってそれは甘い。
あくまでもあなたの結婚式の施主はあなたなのです。
やるか、やらないかを決める決定権があるのは主催者だけなのです。
そう迷っているうちに水曜、木曜と近づいてしまい前日金曜日・・・。といった状況。
勿論誰も悪くないのです。全ては自然の驚異。
けれど、決して責任転嫁をすることなく「主催者判断」が必要な時なのです。
苦しいし辛いしお金もかかる。
どんな結論を出してもスッキリすることは無いと思います。
しかしご家族、ゲスト、スタッフや各業者に至るまで、全ての皆さんがお二人を祝福したいという気持ちで一杯なのです。
そのうえで「やる!」と判断しても、「延期!」と判断しても。
お二人を責めるようなことはありません。
一番ダメなのは、「何も決断せずに誰かが動いてくれるのを待つ」ことです。
何度でも言います。
開催の決定権を持っているのは、あくまでも「新郎新婦だけ」なのです。
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最後に、
「もし“PARTY UP!”Wedding Produceが今回の渦中に立たされたら」。
結論を言えば、既に動いてしまっている業者様の手配物。
特にキャンセルや代替の利かないもの(食材やケーキ、生花など)に関しては、原価分(仕入価格)だけお支払い頂くことになると思います。
これをゼロにすることは、自社だけでなく多くの関係業者様に「善意の強制」をし僕のエゴに巻き込むことになります。
勿論その先には生産者さんや更に多くの企業様。
或いは僕が顔も知らない大勢のスタッフや社員さんがおり、そのような方まで巻き込むわけにはいきません。
ここにはしっかりと支払いを致します。
そのうえで、弊社の利益に該当する費用は全てチャラにします。これが僕に出来る範囲での精一杯の誠意。
勿論弊社にもスタッフはおりますが、彼らにまで無理を強いることはしません。我慢するのは自分だけでいい。
自分のエゴと信念のためになら、スタッフの給与くらいは自腹で払ってもいいと普段から思っています。
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ここまで書いて多少辛辣な部分もあると思いますが、あくまでも今回の原因は「大自然の驚異」です。
一番やってはいけないのは、自然現象で心に余裕をなくした人間同士が争うこと。
これは台風の思うツボ。その時点で負けです。
「当たりやすい場所への八つ当たり」だけは絶対にしてはいけないのです。
そして「式場関係者」も「参列者」も「新郎新婦」も。
全員が悩み苦しんでいることだけは皆さんに知って頂きたいのです。
その上で、キャンセル料を求める式場も、身の安全の為に欠席するゲストも、挙行する新郎新婦も、中止する新郎新婦も。
決して責めないで頂きたいのです
だってこの台風を望んでいた人はこの中に一人もいないでしょ?
誰もが「新郎新婦の幸せと最高の結婚式」を描いて、今日まで過ごしてきたのです。
その判断がどうであれ、責められるべき人はいないはず。
業者側も、「結婚式が中止になってキャンセル料が入ってくること」を望んでいたわけでは無いのです。
残念なことは起こっても、不幸な人間は出してはならないのです。
あくまでも「キャンセル料をゼロにする式場」がメチャクチャ特別なのであって、「キャンセル料を求める式場」を責めないでください
善行を積む人は素晴らしい。
しかし善行を積まない人を責めてはいけないのです。
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さてここからが本題。
僕は僕なりに。弊社は弊社なりにやれるべきことをやります。
他社の批判や善意の強制は致しません。
昨日からこれがTwitterでずっとバズっておるのですが、“PARTY UP!”Wedding Produce では「今回の台風で結婚式を延期または中止にされた新郎新婦さん」に向けて救済措置を図りたいと思います。
① 結婚式のキャンセル料で泣かされた新郎新婦様
② 結婚式の延期または中止で路頭に迷っている新郎新婦様
すぐに弊社へご相談ください。
上記の新郎新婦さんに限り、
「利益ゼロ婚」をプレゼント致します。
弊社の理念は「結婚式が出来ない人をゼロにする」こと。
このようなピンチにこそ動くべきと実感しています。
全ての手配物やギフトを原価で提供し、限りなく自己負担ゼロでの結婚式が可能になると思います。通常頂戴しているプロデュース料金も全て無料で行います。
勿論「利益ゼロ」なので他社やゲストにご迷惑を掛けるような真似は致しません。
あくまでも僕らの善意で処理できる範囲内で、やれることを全力でやりますね。
困っている人を助けられる企業でありたいと思っています。
誰かが苦しんでいるときこそ必要とされる会社でありたいと願っています。
世の中が大変な時こそ強くいられる自分でありたいのです。
大手企業さんが動きにくい時にこそ、我々のような吹けば飛ぶような零細企業の出番です。
僕自身も昨年9月の大型台風は独り身でしたので気楽に過ごしていましたが。
今回は守るべき家族とスタッフがいます。
まずは身近な人を守って、その先にお客様の幸せを作るために。
当然我々も、この台風で泣かされる新郎新婦さんが出ることを願っているわけでも、誰かのピンチに便乗して自社を有名にしたいわけでもありません。
本来ならば、明日明後日結婚式を挙げられるすべての新郎新婦様、ご家族やゲストの皆様が笑顔で当日を迎えられること。
そのことだけが、婚礼に関わる全ての人間の唯一の願いなのですから。
一生の間に一人の人間でも幸福にすることが出来れば自分の幸福なのだ
(川端 康成)