【善意の加害者】
ここ数日ネット界隈を騒がせている某結婚式場の炎上ニュース。
実はこの話が明るみに出た最初の時からtwitterで見つけました。
同業者として「あぁ…やってもーてるな。。」と思いながら見ていたら、瞬く間に拡散されて現在も絶賛大炎上中の様子。
内容をかいつまんで要約すると、
・登場人物はA御夫妻とその友人B氏
・6月に東北の大手式場で結婚式を挙げる
・結婚式準備期間から当日に至るまでトラブル(というか不手際)多発
・打ち合わせ時に名前を間違えられる
・出す予定の無かった旧姓を出される
・一日一組限定のはずがダブルブッキングで二件(?)施行
・引き出物に原価表記有の納品書を同梱される
・飲食提供のオペレーションがボロボロでコーヒーの後に食事が出てくる
などなど、まぁ枚挙にいとまがない乱れっぷりだった様子で。
更にその後のクレーム対応に際し、
・担当者(プランナー)とは会わせられない
・弁護士を通じて双方協議しましょう
みたいな対応をした式場側が絶賛叩かれております。
(往々にして炎上する案件は初動対応が失敗してるパターン)
元はと言えば今回の件も、当事者A御夫妻では無くその御友人B氏がtwitterに内容を投稿したのをきっかけに拡散され、遂には朝のニュース番組にまで取り上げられました。
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さて。
この一連の流れを見てどう思ったかと言う話ですが。
これらのトラブル(不手際)が全て真実であるとした場合、いくら同業者とは言え擁護できるような内容ではありません。
とは言え、今更この式場や会場、プランナーさんを責めるつもりも権利も僕にはありません。
A御夫妻や御列席の皆さんには“お察しします”としか言いようがないですが。
強いて言うならば、「結婚式はどこでやるかではなく『誰とやるか』」
を幾度となくアナウンスしている僕としては歯がゆい思いです。
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今回のことで当事者同士のやり取り以上に気になったのがその周囲を取り囲む匿名の「善意の加害者」の存在。
まぁ出てくる出てくる悪口と晒し上げのオンパレード。
すぐさま式場(ホテル)名は公開され、やがては担当プランナーさんの名前や顔写真までネット上に公開され、今尚炎上を続けております。
これらの「晒し上げ」をする第三者たちの心理。
恐らくここに悪意は無く、
「A御夫妻かわいそう!」
「こんな仕打ちを受ける人が続いてはいけない!」
「こんな式場(ホテル)は無くなるべきだ!」
のような正義感で一連の騒動を応援しているのだと思うんですね。
今回のトラブルに限ったことではなく、先日の芸人さん達のケースでもそうなんですが。
これ。
すごい恐ろしいことだと思ったんですよ。僕は。
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正義感の名の下に攻撃対象(敵)を安全な場所から攻める。
攻撃された対象は数万人、数百万人から攻撃されているかのような錯覚に陥る。
SNSで晒されている以上日本全国に逃げ場はない。(ネット回線の無い離島くらいしか)
いわゆるネットを利用した私刑(リンチ)ですよね。
正義の名の下であれば何をしてもいいという風潮。
これってつまり、戦争と同じなんです。
お互いに自分が正しい(善者である)と思っているから相手を攻撃する。
それが双方にあればやがて戦争になる。
自分が正しいと思って疑わないから争いは終わらず、
やがて大きな被害を生み出す。
過去の戦争の歴史なんて全てこんなもんです。
そしてそれと同じようなことが、現代ではインターネットの世界で行われているのです。
「善意の加害者」というのは自分がやっていることに何の疑いも無く、ただ純粋に「正義のため!」と思って行動を続けてしまう。
やがて行き過ぎた正義は被害者を作り出し、また己を加害者にまで貶めてしまう場合がある。
つまりは不必要な加害者と被害者を増やしてしまう可能性があるんですね。
「無能な働き者」が大きなトラブルを持ってくるのと同様に。
「善意の加害者」は止まることなく対象を攻撃し続けるのです。
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今回の内容。
不誠実な対応を受けてしまった方々や不誠実な対応をしてしまった方。
各々が納得する形で騒動が終着するよう願ってやみません。
そしてこの騒動に加担している一部の皆さんへ。
大手結婚式場のウェディングプランナーの権力なんてたかが知れています。
確かに会社のフロントマンではありますが、ウェディングプランナーと言えどキャリア数年(数か月)のひよっこが有象無象居るのも事実。
責められるべきは会社の対応や教育システム、或いは不手際を出してしまった際のスタンスであって個人では無いのです。
是非とも個人攻撃や前途ある若者の未来を奪うような攻撃だけは止めて頂きたい。
もし僕が、自分や会社の不手際で自社のスタッフが攻撃されるようなことがあったとしたら。
それこそ腹を切ってもお詫びできないような心境になります。
願わくば。
今回のA御夫妻がもし僕らに近い場所にいる方々だったら。
僕は全身全霊をかけて。
全て会社で費用も負担したうえで。
納得のいくような結婚式を改めてプレゼントしてあげたいと切に願いました。
そしてこのようなトラブルに巻き込まれる新郎新婦さんが一組でも減りますよう。
全ての新郎新婦さんが幸せな結婚式を送れますよう。
僕に今出来ることはそう願うことだけです。
仕事って、やっぱり誠意でしょ。
もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。
そうしたいわば紙一枚の差が、
大きな成果の違いを生む。
(松下幸之助)